Indian Film Festival Japan 2013


10月19日から25日に大阪で行われたインド・フィルム・ジャパン・フェスティバルにて映画作品を4本観ました。元々映画は大好きで、1年前の北インド旅行でボリウッドムービーにすっかりハマってしまった感があり、国内でももっと観れる機会があればいいのになあと思っていたところにこのイベントが舞い込んできました。さすがに上映作品すべてを観ることはできませんでしたが、インド映画特有の「上映時間がやたら長い、歌って踊る例のアレ」というステロタイプを打ち砕く多種多様なジャンルの作品が揃っていて非常に楽しめました。

以下備考録がてら軽く感想をば。



【ワダラの抗争】
インド国内でR18指定が出たという実在したギャングの伝説を元にしたクライムアクション。インドにおいて警察は腐敗・圧政に加担するバビロンそのものですが、作品全体のトーンは判官贔屓でありつつもちゃんと警察側の葛藤も描かれます。警察の中心人物には『スラムドッグ$ミリオネア』でみのもんた役(?)だったアニル・カブールを起用し、知名度のある俳優を配置するところからも過剰なバイアスを抑止しようとする製作者側の意図が見て取れます。『スカーフェイス』的なギャングの成り上がりモノとして中々良かったのですが、暴力シーンとセックスシーンがこれでもかというくらいしつこくリピート&スローになって会場中から失笑が沸き起こりました。妙に鬼気迫ってるけれど、生々しいともまや違う…おそらくインド映画における「見得」みたいなモンなんだと思います。多分。




【ゴー・ゴア・ゴーン】
ゴア描写の"Gore"とゴア州の"Goa"を掛けた中学生並の発想に端を発し、ボンクラ兄ちゃん3人(うち2人はポットヘッズ=大麻愛好家)がゾンビだらけの孤島を彷徨うインディアン・ゾンビ映画。『ショーン・オブ・ザ・デッド』のメタパロディもありつつ、『ハングオーバー!』や『チーチ・アンド・チョン』を想起させる「三人寄れば文殊の知恵」を完全に逆行したホモソーシャル感に満ちあふれていて、ゾンビ!マリファナ!レイヴ!セクシー姉ちゃん!とバカの大好物を詰め込んだような作品で、お菓子ポリポリしながら偏差値を下げたい貴兄には最高の映画だと思います。若手監督コンビの製作で既存のインド映画的演出は控えめになっており、おそらく監督2人が通過してきたであろうハリウッドや海外作品の影響がモロに出ている次世代型の作品でした。




フェラーリの運ぶ夢】
大傑作映画『きっと、うまくいく』の監督(今回は製作総指揮)&スタッフ陣が送る祖父・父・息子の三世代が主人公のファミリーコメディ。円環的な時間/空間認識というのはまさにインドのお家芸であり、良い行いは巡り巡って再び自らの元に還ってくるという善行の因果関係をシンプルに描き出しています。まさにインド版『素晴らしき哉、人生!』とでも言うべき作品で、先に紹介した二作とは比べ物にならないくらいの健全な映画でした。インドは絶対的な父系社会なので他人の父親をジョークのネタにしたりするとマジで殺傷沙汰が起きるくらいなのですが、そこに敢えて突っ込んでいくようなリベラルな切り口をほのぼのとした雰囲気に同包させる巧みさが『きっと、うまくいく』に通ずるものがあります。インドにおける現在のクリケット事情をもう少し知っていたらより楽しめたと思います。余談ですがお父さん役のシャルマン・ジョーシは横分けで常に笑みを絶やさない人で、たまに堺雅人に見えます。




【ハウスフル2】
バラナシで観た作品。相反し合う嫡子と庶子の家族が周りを巻き込んで結婚騒動を起こすドタバタコメディ。オムレストハウスのスタッフに「コメディだし踊りや歌がいっぱいだよ」と勧められ、ヒンディー語のセリフはわからないけど全体的にド派手だったので凄く印象に残ってました。おそらく日本人がイメージする「歌って踊るインド映画」に一番近い作品です。ポスターを観てもわかる通りボリウッドスター大出演のビッグバジェットムービーで、インドにおける2012年度の映画興行成績では第6位を記録しています。裏を返せば大衆迎合という目標がハッキリしている作品であり、特に音楽面でのクオリティが素晴らしくサントラも購入してしまったほどで、なんだかんだエンタメとして一番バランスが取れてたのはこの作品だと思いました。日本人なら辟易するようなしょうもないスラップスティックもありますが、バラナシで観たときは観客がゲラゲラ笑ってたのでインドではああいうノリが受けるのでしょう。