tropical steelo.
台湾数日滞在のあとは、この季節ならではの避寒で更に南の東南アジアへ。
「旅のテーマ」なんていう大それたものではないけれど、一応旅人としての心持ちというか漠然とした目的だけは毎回なんとなく決めていく。というわけで今回は「見て回る」ことに重点を置いて、割とガッツリ動きまわり世界遺産なんかに訪れる一方で凡百の旅行者が行かないようなところにも足を運んだ。なにもせずダラけるアジアもいいが、灼熱の太陽のもとに行軍するアジアもまた良し。遺跡群を見て回るだなんて、ちょっと前のへそ曲がりの自分なら絶対やらなかっただろう。
心変わりは体調の変化のせい。去年一年は特に調子が悪かったのだけれど、年末から年始にかけての検査・診察・薬の変更なんかで随分と改善した。人間元気なうちが華、この限りある健康を大切にしてやれるべきことは今やっておこうと決心するに至ったのだ。一年間の不調を乗り越えての行脚。心持ち一つで見える景色もまた違うのでした。
続きを読むformosa boulevard
2月初旬、3度目となる訪台で初の台中へ。台北から中距離バスで揺られること数時間。台中といえばヤクザとバブルティーなので、とりあえずヤクザは置いといて春水堂でバブルティー飲んできました。この直後閉店間際の宮原眼科(※名前は眼科だが実は老舗のスイーツショップ)で土産のパイナップルケーキを購入し、特に観光もせず次の国へと向かったのだった…。その次の国に関してはまた今度。
2016 on fire
あけましておめでとうございます。
お年玉を貰ったわけでもないのに(むしろあげるハメに)なぜか衝動的に音源をバカ買いしてしまった。2月の旅に向けてのサントラ準備…と最もらしい理由でも付けておく。
- アーティスト: Jeremy Steig
- 出版社/メーカー: Blue Note Records
- 発売日: 2008/09/02
- メディア: MP3 ダウンロード
- この商品を含むブログを見る
- アーティスト: エディ・カノ&ヒズ・クインテット,エディ・タラマンテス,エディ・カノ,デヴィッド・トロンコソ,フランク・グティエレス,マックス・ガルドゥーノ
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック
- 発売日: 2014/09/24
- メディア: CD
- この商品を含むブログを見る
王舟は学生の頃JETSETで"Thailand"のCD-Rを購入して未だに聴き続け、自分の中ではずっと「インディー界隈のええ音鳴らす人」というイメージのまま停滞していたのだが、知らぬ間にガッツリとアルバムを作っていた。今月20日には2ndも出るそうで。
Shellac Japan Tour 2015
今更ながら11月末にShellacの来日を観に馳せ参じたことを書き記すなど。既に日付を越えて今は12月31日。もうひと月経ったのか…今でも鮮明にあの空気と風景が脳裏に焼き付いている。
説明不要のUSインディー界の裏ボス、スティーブ・アルビニ先生率いるバンドといえど平日のギグだったのでどんな感じの入りだろうと思いきや、まさかのソールドアウトで箱は満杯。現場においてはプレイ云々というよりもむしろバンドのアティテュードに感銘を受けた夜であり、ちょうどその時に『赤めだか』を読んでいたのでスティーブ・アルビニが立川談志とダブって見えた。両者は人種もジャンルも違えどDIY精神の権化であり、パブリックイメージとしては気難しくてとっつきにくい印象があるけれど、物事をちゃんと論理立てて思考するし、後続の人間にもその基準をちゃんと示す(そのクオリティの基準はとてつもなく厳格ではあるが)。そういうところでもこの両者は似通っていると思う。
特にこういったポストロックはアブストラクトな印象が強いけれども彼らは決して感覚的に演っているわけではないし、無責任に「ロックは感じるものだ」とか言い訳したりもしない。綿密に計算し尽くされたロジックという基盤があってこその内容だし、そしてなによりもギグがとても楽しい。魅せ方を凄くわかってるというか、エンタメとしてのクオリティも高い。
一番驚いたのがこちらからの質疑にも丁寧に応答してくれたこと。一端の音楽好きなので今までも色々なライブを見てきたけど、「それじゃあなんか質問ある人!」とかライブ中に言い出すバンドは初めてで、どちらかと言えばワークショップのようだった。終盤には「最後に2曲やって終わる。このあとステージ前でTシャツを手売りするよ。なにか質問があったらそのときに聞いてくれてもいいし、サインや写真が欲しかったら言ってくれ。別に何も買わなくてもいいからさ」と遠慮がちな日本人を気遣ってかわざわざ先立って言ってくれるあたり、仮初めではない本物のOMOTENASHI精神の持ち主だった。そして本当にアルビニ先生自らシャツを手売りするのであった。
プロデューサーとして八面六臂の活躍をするアルビニ先生ではあるけれど、裏方としてのゴトシだけではなくあくまでも現場主義を貫く一介の音楽家としての姿勢というか、覚悟みたいなものを見せつけられた夜だった。
airbnbを使ってみた
7月に香港に行った際、今ちょっと話題になっているairbnbを利用して宿を取ってみた。着の身着のまま、現地についてから安宿探し…がいつもの旅のスタイルではあるけれど、限られた短い日程で都市部のみに滞在するときはちゃんと渡航前に予約することが常となっている。今回は重慶大厦にでも泊まるかな~と考えていたところ、よく見ている旅系サイトの管理人さんがairbnbの紹介クーポンをバラまいていたので白羽の矢が立ったというわけです。
宿を選ぶ上で一にも二にも先立つのが値段。普通の香港人にとって「家を買う」というのは夢のまた夢…というぐらいの地価のバカ高さで有名な土地なので宿代もネックになりそうだなあと考え倦ねていたけれど、前記したairbnbのクーポンが約14,000円引きという小学生が適当に決めたような割引額のおかげでかなり安く泊まれた。
そしてairbnbが普通のゲストハウスやホテルの予約と違う一番大きな点が、人様の所有している物件を間借りできるということ。物件を所有していてそれを転貸したいホストと、現地人が普段暮らしているような部屋を宿泊施設として利用したいゲストの思惑が見事に合致した結果といえる。airbnbはあくまでも斡旋・仲介を行っているだけなので実態は個人間の取引になる。部屋を借りる場合はひと通りの個人情報、SNSのアカウント、そしてパスポートも登録しなければならない。パスポートに関してはウェブカメラで撮って送信するというスタイル。料金はクレカやPayPalで決済。実に簡単だった。
設備・ハウスルール等が物件によって様々なのは一般的な宿泊施設と変わらないが、airbnbの物件では最初にホストと待ち合わせをして鍵をもらったり、逆に滞在中一度も会わないままだったりもする。俺が泊まった部屋はパスコードロックのある部屋で、部屋の中に入るとカードキーがあり宿泊中はそれが利用できた。雑居ビルの一室だったので当然レセプションなどはない。しかしairbnbのメッセンジャー的な機能でホストと連絡は可能で、滞在中に「近くにランドリーはあるか?」という質問をしたらすぐにホストから返信が来た。長期滞在の場合は言えば掃除もしてくれたようだ。
余談ながら宿の検索時に大学構内にあるデモ隊のテントまで登録されていて笑った。数日後見てみたら既に消されていたのでジョークだったのかどうかは分からないが、こういう普通なら絶対に宿泊先として挙がらないであろうものですら選択肢として立ち上がってくるのが非常に面白い。個人間の取引なので自由度が高く、ホテル、ゲストハウス、ホステル、カウチサーフィンくらいしかなかった旅の宿泊スタイルに風穴を開けた感じだ。これといって定宿のない場所や、土地勘のない旅先でまた利用してみようと思う。
Hong Kong Express
遂に憧れの地、香港へ行ってきた。
滞在三日目、中心街の喧騒を離れて獅子山の頂から都市部の街並みを眺めつつ、なんとなくThe Jamの"In The City"という曲を思い出していた。Umbrella Movementという学生を中心としたデモがこの地で起こったのは記憶に新しく、ここ獅子山の岩壁にも「我要真普選=真っ当な普通選挙を希望する」のスローガンが掲げられていた。
1970年代、かつての宗主国であったイギリスでマグマの如く吹き出した若者の憤怒や焦燥がパンクロックという表現技法を用いて掻き鳴らされ、そこで歌われていたことがそのまま数十年後の香港の状況と合致してしまったというのは、歴史は繰り返されるというべきか、停滞する人治とそれに抗う若者のエネルギーはどの時代でも普遍というべきか、運命的とまではいかないにしても色々と考えてしまう。
香港を中心として、マカオ、そして深センという事実上3カ国を跨いだこの旅は、政治経済に対する認識から偶然の人々との出会いまで網羅した非常に濃いものだった。トイレが全然ないMTR、茶餐廳の出前一丁、土日に響く北京語…良し悪しは別として、一介の異国からやってきた旅行者として思うのは、この混沌こそがアジアの醍醐味であるということだ。自分の中で膨張していた「香港像」が実際に渡航して崩れ落ちるという懸念もなかったわけではないけれど、やはり来て正解だったのだ。
The Jam - In The City - YouTube
街中に燦然と輝く幾千もの顔がある
黄金色を纏ったその顔は25歳以下の奴ばかり
奴らは言いたい 奴らは伝えたい
若い人間の考えてることについて
ゴチャゴチャ言う前に聞いてくれよ
あんたらが考えてることはわかるよ
俺のことをロクデナシだと思ってんだろ
だけどしっかり耳を傾けるべきだ
若い奴らは楽しいことがどこで起こってるのか知ってるのさ
街中に制服に身を包んだ幾千もの人間がいる
そいつらには人を殺す権利があるって話だ
俺達は言いたい 俺達は伝えたい
若い人間の考えていることについて
上手くいかなくても とにかくやり続けてやるんだ
- The Jam / In The City